福祉現場で働く私たちにとって、「利用者のために」というフレーズは、支援の基本的な姿勢であったり、ごく当然のこととして捉えている言葉だと思います。そんな私にとって、プロ野球選手イチローのインタビューでの言葉は、とても新鮮でしたので紹介します。
「ヤンキースでは『勝つこと』が使命であり大前提だ。加えてファンは勝つことだけでなくプロフェッショナルなプレーを見たがっている。しかしヤンキースの「ために」戦うのではない。大切にしているのは、『思い』だ。『何かのために』は聞こえは良い。でも時に思い上がっているようにも思える。人間関係においても言えることだが、誰かの『ために』やろうとすると厄介な問題になることがある。しかし、誰かを『思い』何かをすることには、見返りを求めることもなく、そこに愛情が存在しているから不幸な結果になることが少ないように思う。ヤンキースは『思い』を強く持たせてくれた組織だった」
「だれかのためではなく、だれかを思い行うこと」、スヌーズレン実践において重視すべき人間関係を示唆しているようにも思います。私をスヌーズレンに強く結びつけたのは、非指示的な関係を重視するというスヌーズレンのコンセプトでした。このコンセプトをさらに深化できるようスヌーズレンにおける利用者とパートナーの関係性について、日々の実践を通して言葉にしていく作業を続けていきたいと考えています。 (日本スヌーズレン協会機関誌 スヌーズレンジャパン41号 2015年)